セッションNo.007 戦いの後で、青年は…


◯「セッションNo.007 戦いの後で、青年は…」F8 2018

戦いの後で、青年は空を見上げた。

髪を飾る羽と、腰に短剣。

彼は見た。眼に星が灯った。

託されたのは、ひとつの夢だ。

◯僕はこの絵を初め、右手を高く挙げ、左手を下に垂らした道化師の絵だと考えた。だが、セッションを行った相手の見ているものは、やはり僕のものと全く違っていた。僕が掲げた右手だと思っていたものは、彼女にとって、頬を彩る化粧と、髪を飾る羽だった。そしてむしろ、彼女が注目していたものは、僕が腕だと考えていた二本の線などではなく、絵の中の人物(これが人物だという点は初めから意見が一致していた)の視線の先だった。彼女の前で、それは星を見上げていた。

◯彼女が絵を通して見ていたのは、こんな光景だ。広い荒野に男が独り立っている。髪飾りと頬に化粧。アメリカの先住民の1人かもしれない。戦いの後だ。彼は多くの悲しみを見た。ただ、何か一つ、確かなことを知った。涙も流したかもしれないが、同時に何かを心に決めた。彼は若いリーダーだ。

◯僕は彼の腰に短剣を一振り描き加えた。戦いの象徴として。

◯彼女の話を聞きながら、僕はブラックエルクという人物のことを思い出した。彼は自らを語る際に、それを「強力なヴィジョンと、それを実現するだけの力のなかった男の物語」と言っていた。僕たちの見た若いリーダーがこの先どのような道を辿るのか、それはまた別の物語だ。ただ、僕は彼が戦い(それが内面的なものにしろ外面的なものにしろ)の後で得たものは、ひとつの夢なのだと思った。それは一般的な意味でのこちらが能動的にあれこれ考えるようなものではなく、突然向こうからやって来て、その人を捉え、変容させ、行く先を決定してしまうひとつのヴィジョンだ。こちらへ向かってくる流星のようなものだ。彼は左眼にそれを迎えた。彼は彼だけのものでなくなった。これが僕の見たものだ。あるいは、今なお戦う彼女の姿だったかもしれないが。

18/jun/2018

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